上司が替わると評価も変わるのはいかがなものか?
人事異動があって上司が異動してきたり、あるいは自身が他の部門に異動したりということはよくあることです。この時、上司が替わったことで評価が変わるということについて、「上司が主観的に評価しているからだ。これは公平ではない」とおっしゃるケースがあります。上司が替わると評価が変わるというのはよろしくないことなのでしょうか?
上司によって仕事の進め方は異なるもの
上司、つまり管理職はその部門で担っている機能をきちんと発揮し、所定の成果を上がることを求められています。そのためにさまざまな権限が付与されています。上司としては自身が最も適切と考える方法で進めることになります。この時、当然、上司によって進め方が変わることになります。よくある話がより効果的、効率的に業務を進めるために分業しようというとき、業務の流れを分析していくつかの作業をまとめて特定の人が担当するようにすることで習熟度を上げて効率化を進めるという方法もあれば、そのように分断すると却って全体が見通せなくなって一人一人ひとりの創意工夫を引き出せないからそれぞれの個人が業務を完結させるように進めるという方法もあります。それぞれ一長一短あって、どちらが正解とはいいづらいところがありますが、上司がいずれを採るかによって仕事の進め方が変わってしまいます。どちらの方法でも大丈夫という人もいるかもしれませんが、仕事の進め方による得意不得意がある方は、それによって評価が変わることになります。
仕事の進め方に関する相性の違い
また、残念なことに仕事の進め方の相性というものあります。事細かく報告する/求めるというスタイルになれている人もいれば、任される/任せるというスタイルになれている人もいます。このスタイルが合っているメンバー/上司の関係であればよいのですが、ずれていると「どうも馬が合わない」ということになってしまい、このことは仕事ぶりにも影響を及ぼしてしまいます。結果的に評価が変わってもおかしくはありません。
気をつけておきたいのはこれはいわゆる「性格の不一致」ではなく、仕事の進め方に関する相性の違いであるという点です。前者は人格に関することですが、後者は行動に関することです。上司としては「性格」というなかなか変えづらいもののせいにするのではなく、あくまでも行動レベルの変容について働きかける必要があります。
上司の上司の任命責任
どのようにマネジメントを進めるか、これは管理職である上司に任されています。メンバーとしてはそれを尊重する方がよいでしょう。そうはいってもメンバーからすると、そのやり方は間違っているのではないか、あるいはその方法は耐えられないということもあるでしょう。
「上司のやり方が必ずしも正しいとはいえないのではないか?」
その通りです。ではどうするのでしょうか?
上司を任命した上司の上司には任命責任があるのです。きちんとマネジメントをしているのか、その方法や背景となる考え方は自身(上司の上司)の考え方や価値観と合っているか、そもそも会社の経営理念や経営方針に合致しているか、そうしたことを任命した上司の上司はきちんと把握しておかなければなりません。
その意味では「上司のハラスメント」は当人の問題でもありますが任命した上司の上司にも責任があるということになります。メンバーから不満が多い、メンタルヘルスに関する状況が悪化している、離職が増えているといったことがあれば、上司の上司はその部門の上司のマネジメントに対して介入する必要があります。「いやぁ、彼に任せているから」とか「それはメンバーの方にこらえ性がないからだ」などといって放置しておくのは不作為の罪ともいえます。
評価が変わったらどう対処するのか
特に部門の状況を改善する、つまり立て直しなどを目的にした人事異動は、仕事の進め方を変えたり、その部門の組織風土や慣習を改革することが目的であることがほとんどです。従って仕事の進め方は当然変わりますし、何を重視して仕事をするのかという重点ポイントも変わります。前と同じように仕事をしていたらどうなるでしょうか? そもそもこれまでの進め方が適切ではなかったから立て直しの対象となっているのですから、以前と同じでは評価が変わる(下がる)のは当然のことではないでしょうか?
メンバーにしてみれば「今までと同じようにやっているのになぜ?」と思うかもしれません。だからこそ新しい上司は変える目的や理由を説明する必要があります。メンバーは「え~、これまでのが慣れていてやりやすいのに‥‥」と思うこともあるかもしれませんが、ここは新しい方法に乗ってみるのも一つの考え方かもしれません。
もちろん、新しい上司の策が正しいとも限りませんし、変えるべきはここで「評価が変わるのはいかがなものか?」と感じている当人ではなく他のメンバーが担当している業務の方かもしれません。ただこのように上司が替われば評価基準も変わるし、それを目的として上司が後退することもあるのだということを前提に、評価が変わるのがおかしいと捉えるのではなく、なぜ変わったのかに注目してみた方がよいかもしれません。