Q:「いろいろと将来のことを考えていると不安で仕方がありません。キャリアを考えるとこの不安はなくなるでしょうか?」
<こたえ>
その不安はどこから来るのでしょうか?
不安に感じるのは、これからどうなるかが分からないときであり、しかも多くの場合、よくないことが起きそうだと考えるときです(よいことが起こりそうなら不安ではなく期待が胸をしめるでしょうから)。
ここで考えたいのは、将来のことが分かると不安はなくなるのか、心に安定はもたらされるのかということです。
確かに将来のこととが分かると不安はなくなるかもしれません。でもその一方で恐くて生きられないような気もします。なぜなら将来のことが分かるということは、極論を言えばいつどんな形で死ぬかも分かっているということです。その具体的なしに向けて一歩一歩確実に近寄っていくような人生が果たして耐えられるでしょうか? それだけではありません、いつどこで転けるのか、どんな病気にかかるのかも分かってしまうのです。
いや、いいところだけ分かってくれればいいんだけど、というような虫のよい話にはなりません。いいことも悪いことも分かってしまうというのが将来が分かるということなのですから。
不安はなくなるかもしれませんが、心は決して穏やかではなくなるでしょう。
もう一つ考えてみたいのは、不安の影には後悔があるのではないかということです。つまり、もし、今ここで決めたことが(決めなかったことが)将来、まずいことになったらどうしようかと思うから不安なのではないかということです。将来後悔したくないと思うあまり、今の選択がこれでよいのか、他にできることはないのか、やらない方がよいことはないのかと気になってしまう。これが不安の元になるのではないでしょうか。
だとすればできそうなことは一つ。後悔しないような選択をすることです。
とはいっても先に検討したように将来のことは分かりません。だから誤った選択をすることは避けられません。
ではどうするのか? 「あぁ、あの時こうすればよかった」と思わないようにすればよいのです。そのためにはその時点で納得できる判断をしておことです。納得できる判断といっても情報が潤沢にあるわけではありません。分からないなりに決めるしかありません。それでも自分の選択に納得できるようにしておこうとするならば、自分なりの判断根拠を持つことです。
キャリア上の判断根拠が内的キャリアです。自分の内的キャリアが分かり、それによって判断したのであれば、「まぁあの時は精一杯考えてこうしたのだから仕方がないや」と思えるのではないでしょうか?
とはいえ、それほど簡単なことではなさそうです。
なぜなら内的キャリアは変わることがありますし、そうはいっても隣の人をみたときに、うらやましく思ってしまう気持ちは抑えられないからです。でも、きっとそれは不安なのではなく、そのときに感じる後悔でしょう。これだけは過去のものですから取り返すことはできません。
ただ、もう一つのすくいはキャリア開発はいつでも、どこでも、誰でもやり直すことができるものだという点です。過去に立ち戻ることはできませんが、今からでも方向修正すればよいのです。