組織が社員に「キャリア・スケープ」を提示することの意味は何でしょうか? 
 そもそも提示すべきキャリア・スケープとはどのようなものなのでしょうか?


 組織の中でキャリアスケープを明らかにするということは、経営戦略を展開する上で必要な人材を明確にするということです。
 中長期的には共有したい企業理念、経営目標を明らかにするととも、そうした理想像を実現するために、どのような人材が必要なのか、そのイメージとポートフォリオを明らかにするということでもあります。

 必要な人材と書きましたが、正確には「必要な役割」です。
 要は将来の戦闘態勢を整えるためにどのような役割が必要なのかを発想するのです。その役割が固まれば必然的に求める人材像は明らかになります。どのような知識やスキルを持っているべきかも決まってきます。
 キャリア・スケープとは、この役割の一群です。どんな役割があるか−これがキャリア・スケープです。
 役割が固まると、その役割同士を結ぶ筋道も自然とできあがります。その筋道こそキャリア・パスであり、役割と併せてこれを示すことで、社員はその役割に到達しやすくなります。役割ごとのコンピテンシーがあきらかであれば、なお一層社員の取り組みはやりやすくなります。


 社内での必要な人材像や求められる役割、組織風土として流れる価値観が明らかになることで社員は、自分の選択できる将来を見据えることができ、さらに自分のキャリアを主体的に捉え、その実現に向けた自己研鑽をすることも出来るようになります。
 当然、環境の変化によって、提示していたキャリア・スケープのうちの一部の役割がなくなってしまうこともあり得るでしょう。これまでであれば、本人は選んでその役割になったわけではありませんから、自然とそのような配置をした方に不満をぶつけざるを得なくなります。
 しかし、その役割も含めて選択肢が示されていたのであれば、それを選択したことは本人の自己決定であるわけですから、組織が一方的に責めを負わなければならないということはなくなります。きちんと情報を開示しておくことが、本人の自律を促すのです。

 また、たとえ一時的に不本意なポジションに行くことがあっても、先が見通せますから、いつでも元のパスに戻るための活動を始められますし、この経験を自分の将来への糧ととらえ直すこともできるようになります。

 組織が個人のキャリア展開を一方的に決定する時代は終わりました。右肩上がりの時代なら、ある程度の予測は出来ました。しかし、変化の激しいこの時代に、いくら社員の面倒は組織が見てやるのだと大家族的に発想しても、個々人のキャリアを組織が決定することには無理があるのです。
 キャリアの選択は本人に任せるのが一番です。
 ただし、何でも自己責任というわけにはいきません。きちんと自分のキャリアが考えられるように情報提供をする必要がありますし、考えるための方法を習得する場と機会を提供することも必要です。
 その情報がキャリア・スケープであり、場と機会が「キャリア開発ワークショップ」や「キャリア・カウンセリング」なのです。
 また社員が自己成長しようとする力こそ、組織が活性化するためのエネルギーになるのです。