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専門職とリスク(#7)
役職定年制(#8)
2004/5/19
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目標によるノルマ管理(#9)


 「役職定年制度が導入されましてね。来年はもう部長を降りなければならないんですよ。
  部長下りた後は、専任部長になることが多いのですが、はっきり言って閑職なんです。
  だから今のうちに転職活動をしようと思いまして・・・」

 一定の年齢になると部長や課長などの役職を解く制度を役職定年制度といいます。
 労務行政研究所の調査では40%企業が導入しているとのこと。
 (ついでにいうとキャリア・カウンセリングを導入している企業は6.5%だそうですよ。調査対象は全国証券市場の上場企業および店頭登録企業、およびそれに匹敵する非上場企業合計3974社。このうち回答があったのは260社。6.5%ということは、統計学的には260社近くの会社でキャリア・カウンセリングが導入されていることになりますね。実数だと17社というところでしょうか)

 よく似た制度に役職任期制度というのがあります。
 年齢ではなくて、その役職に任期を設けておいて、任期が切れると再任するか退任するかを決めるという仕組みです
 これは導入率3.1%。
 10分の1以下です。

 さて、役職定年制度と役職任期制度、あなたはどちらがお好きですか?
 あなたがキャリア開発を支援する立場だったらどちらを選びますか?


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 ★ 役職定年制は「差別行為」
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 米国では性別や人種はもちろんのこと宗教などによる差別が禁じられているのはご存じですよね。
 この中に年齢も入っています。
 採用や昇進、教育訓練や報酬、解雇などに関し、40歳以上の高齢労働者を差別することや、年齢を理由に分類したり雇用上の機会を失わせたり、その地位に不利な影響を与えることを禁止しています(雇用における年齢差別禁止法)。
 つまり年齢によって役職を退かせる役職定年制は米国では不法行為になるのです(40歳以上に限られるということになるのでしょうけど)。

 一方役職任期制の方はもともと期限を決めているわけですからそれ自体が差別行為になるわけではありません。
 (40歳以上は再任しないというルールにするとアウトですが)

 でも日本では役職定年制の方が多い・・・。
 これはなぜでしょうか?
 役職定年制の方がうまく行くんでしょうか?
 実際には、その年齢に至っても、「ほかに代わる人がいないから」という理由で留任させたりするところも少なくないことを考えると、制度そのものがよくできているというのではなさそうです。


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 ★ 言いにくいことは言わずにすませたい
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 役職定年制と役職任期制の大きな違いは、「年齢」で判断するか、「就任期間」で判断するかの違いです。
 が、前者は基本的にはその職から離脱するのに対して、後者の場合は「再任するかどうかをその時に判断する」ということが伴います。

 つまりこういうことです。
 役職定年制の場合は、50歳ときめれば、誰でも50歳になるのだから自動的に役職を離脱することになります。
 ただ、その中でも「この人は」と思う人だけに、「ほかに代わる人がいない」などと理由を付けて役職定年を延長すればよいのです。
 本人にとっても悪い話ではありませんから、切り出す方も気が楽です。

 ところが役職任期制の場合は、任期を終了すれば、全ての管理職に対して再任するかどうかを決定しなければなりません。
 再任する人に「もう1期」と言うのはたやすいことですが、再任しない場合はその旨を伝えなければなりません。
 「なぜ再任されないんですか」
 と聞かれることはほぼ間違いありません。
 そうでなくても言いづらいことなのに、さらに再任しない理由まで伝えなければならないとなると、上司も人事部門もつい及び腰になってしまう。
 だからいちいち説明をしなくてはいけなくなるような任期制ではなくて、自動的に説明しなくても役職を離脱する定年制の方がよい−というのが大方の判断だと思います。

 実際、ある先輩コンサルタントにも「役職任期制はかえって組織を乱すから、誰でも納得できる役職定年制の方がいいんだよ」と言われました(ただ、この先輩は後になっていつの間にか任期制推奨派に鞍替えしていましたが‥‥)。

 言いにくいことはできるだけ言わずにすませたい − これが役職定年制を選ぶ理由と思って差し支えありません。


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 ★ 年齢と実力は比例しない
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 先に述べたように役職定年制度を導入していても、「余人に代え難い」という理由で役職定年を過ぎてもその職位にとどまらせることがあるように、現実には年齢だけでは決められないのです。
 年齢が若いからがんばれるとか、年をとっているから実績に結びつかないということはないのです・
 若くても若年寄りみたいなのはいますし、年齢をとっていても他の人よりも一回りは若く見えて、活動力もあるという人もいます。

 年齢だけでその人を判断してしまう役職定年制というのは、年齢という誰にでも同じように訪れるものを基準にしているという点でとても公正に見えますが、じつは一人ひとりの違い、つまり個性を無視しているという点で非人間的であると思います。

 キャリア開発と言うことを考えるのであれば、あくまでも一人ひとりのことを大切に考えるべきです。
 であれば役職定年制度を選択するのは明らかに間違いです。

 役職定年制度が生まれた背景には、若手の社員を抜擢するために、管理職ポスト空けさせることがありました。
 今後少子高齢化が進むと組織の高年齢化も進みますから、ポストを次の世代にうまく引き渡していくような仕組みは必要かもしれません。
 引き渡せるようにするには、ポストを明け渡させる仕組みにだけ着眼するのではなく、現職がその力を生かせるような新たなキャリア・パスを設計できるように支援することの方が大切なのです。
 次に進む道筋があれば、たとえそれが上位職位への昇進でなくても働きがい、生きがいを感じられる仕事であれば満足できるのです。

 人事は水と同じ。
 流れが止まるとよどんできます。
 入る一方だとあぶれてびしょびしょになってしまいます。
 いつもきれいな水が流れ込み、次へ、次へと流れていくようにするのが人事の要諦だ−とは私の昔の上司の言。

 その人その人の持ち味を活かしながら、その人らしい流れになるように支援したいものです。


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 ★ おまけ
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 その人の持ち味を活かそうとするなら、その人自身が自分の持ち味に気づいている必要がありますね。
 そのためにもキャリア・カウンセリングが必要です。
 キャリア・カウンセリングの導入率が早く40%くらいになるといいですね。
 


 このメールマガジンは、キャリアスケープ・コンサルティングが発行しました。
 キャリアスケープ・コンサルティングのホームページは     
 
 そもそも、一括りに管理職といってもその内容はさまざま。
 どんな役割「職責」を担う管理職なのかを「役割」として示しておくとより分かりやすいのですけれど。
 キャリア開発と役割いう視点から考える人事制度(HRD/HRM)については こちら 

 

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