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公平と公正(#6)
専門職とリスク(#7)
2004/5/12
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役職定年制(#8)

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 ★ 専門職って一体なに?
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上司「今日はあなたの今後のキャリア開発について話してみようと思う。
   これからの方向性を考えたことがあるかね」
部下「えぇ、漠然としたままなんですが、人を管理するのはどうも苦手なので、
    管理職ではなく専門職を目指そうと思います」
上司「そうか。どういった領域を考えているんだね」
部下「今の仕事はとても気に入っているので、このままこの領域でのスキルを高めていきたいと思っています」
上司「そうか、なるほど。分かった、じゃぁそのように人事にレポートしておこう」

 こんな簡単な面接であなたのこれからのキャリア開発を決めてしまってよいの? という点は別の回に『面接』をテーマにして取り上げるとしても、このやりとりにはよくある大きな勘違いが見られます。

 一つは「管理職か専門職」あるいは「管理職でなければ専門職」といったような、管理職と専門職を対立するものと考えているところ。
 管理職と専門職は二者択一なんでしょうか?
 しかも管理職になれないから専門職というニュアンス‥‥。

 もう一つは特定の領域の仕事にこだわっていれば専門職だと思っているところ。

 さらにもう一つは「人を管理するのが管理職」というところです。


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 ★ 管理職か、専門職か それが問題だ
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 専門職とは「高度な専門知識を活用し、企業戦略結びつく研究、開発、調査、企画などの分野で特定の職務を担当するスタッフ職」(人事・労務用語辞典・日経連政策調査局編)です。
 こうした社内専門家をきちんと処遇し、組織の知的なコアとして活用しようとしたのが一般に「専門職制度」といわれるものです。

 ところが実際には「専門性」というよりはポスト不足対策として専門職を設けているところが少なくありません。
 部長、課長といった管理職は当然、一つの組織に一人だけです。
 組織の成長が一段落するとそれほどポストは増えません。
 一方で少子高齢化が進んでくると社内の年齢構造も徐々に「高齢化」してきます。
 これまでの常識でいうと「そろそろ管理職にしてもいい年頃」になったのに、なかなか管理職になれない人が増えてきます。
 こうした人たちのモラール(志気)を維持するために、「専門職」として処遇することにしたというところも少なくありません。
 全てがそうだとはいいませんが、部下のいない「専門課長」などはその可能性が大です。

 本来の「専門性」にもとづいた専門職ではなく、「管理職になれなかった人」を処遇するための専門職は、職能資格制度の広がりと同時にポスト不足対策として一気に広がっていきました。
 職能資格制度は個人の職務遂行能力に基づいて個人を格付けるシステムです。
 だからポストに関係なく格付けを上げることができます。
 ○等級というのだけでは(名刺が)寂しいので、ついでに「○○専任課長」という肩書きを付けてあげることが多いのです。
 これが最も多いケースではないでしょうか?

 こうした結果、「管理職でなければ専門職」→「管理職になれなければ専門職」という発想を生んだといえるでしょう。

 少しまとめると、専門職は、本来は社内専門家であるはずなのですが、組織内での昇進・昇格の管理職以外の選択肢として使われているところも多く、一概に専門性が高い人とは言えないといういということです。


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 ★ 専門職はリスクが高い
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 あまり言われていないようなのですが、同じ組織の中でも「専門職」というのはある意味でとてもリスクの高い職種です。
 本来の専門職であればその領域での専門的な知識やスキル、高度な経験が求められます。
 これらを維持するためには、普段から知識やスキルのブラッシュ・アップは欠かせません。
 さらに求められる専門性の度合いは日に日に高まってきます。
 「置いて行かれる」可能性があります。
 専門職の方からは「自分の力がいつか及ばなくなる日が来るという怖さがある。だから一生懸命勉強している」という声を聞きます。
 だから自分自身への投資もするし、時間も投入している人が少なくありません。

 そうしていても突然、組織の中からその専門領域が無くなることがあります。
 たとえば本来の意味でのリストラクチャリング(事業再構築)やM&A。
 部門ごと無くなったりほかの組織に編入されたりすることが起きる時代になっています。
 その時専門性が高ければ高いほど、「社内にほかの居場所を探す」ということが難しくなります。
 専門性にこだわればこだわるほど間口が狭くなるのです。
 先に触れたように、専門性の高度化に時間も費用も投じていると、余計に、キャリア選択上での幅広さを失っているかもしれません。

 専門職を選ぶというのは、管理職には向かないからと言う消去法で考えるようなものではないと思うのです。


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 ★ その道のプロ−専門職と専任職
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 実は「専任職」というのもあります。
 専門職とどう違うか‥‥専門職と同様に使っている会社もあるようですが、区分するとすれば「特定の領域の職務に従事する職種」である点は同じですが「その職務の専門性の程度の違い」といえるでしょう(実は専任職は先の辞典には出ていないのです。でも人事の世界では一般用語)。
 どう違うのですかと聞かれたとき、「専門職はスペシャリスト、専任職はエキスパート。どっちもその道のプロであって、誰にでもなれるわけではないけれど、専門職の方が専門的な能力、知識が問われる。専任職の方は経験も重視されるでしょうね」と答えることもあります。

 営業の専門職というのはあまり無いのですが、営業専任職というのはよくあります。
 専ら営業を任じられるということですね。

 実は多くの組織では、専任職も管理職との対立軸の中で生まれてきていることが多いようです。
 つまり、管理職には向かないが、今の仕事はずっとやっていこうと思うという場合に専任職を選択できるように人事制度が設計されているということです。

 専任職になると職種転換を伴う人事異動がかからなくなったり、場合によっては転居を伴う異動もないこともあるようです。
 こうしたことはその会社ごとに決めていることなのですが、こうした条件に合わせて、賃金の面でも専任職を選ぶ前と後では異なることもあります。
 営業専任職になるとインセンティブ(たとえば販売額に応じて支払われる報酬)がつく分、基本給が若干低くなるとか、勤務時間を自由裁量に任せる分、時間外勤務手当が固定になる(正確にはみなし手当になる)といったようなのがそれです。

 専任職は人事政策の都合で生まれたような面もありますが、働き方の選択肢が広がるという面では、評価されてもよいかもしれません。


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 ★ どう働きたいですか?
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 働き方の選択肢が広がるということは、自分なりの働き方、生き方を実現できる可能性も大きくなるということです。
 このことは裏を返せば、自分はどんな風に働きたいのか、生きていたいのかということを分かっていないと、周りに流されたり、組織の都合に押し切られたりということになってしまいます。

 いくら組織が選択肢を示してもそれを個人が活用できないのであれば、組織サイドで決めるしかないですからねぇ。

 自分はどうありたいのか?
 大学3年生は今、就職活動の終盤を迎えていますが、彼、彼女らは一生懸命、自己分析をしています。
 自分のやりたい仕事は何なのか?

 実は、社会に入っても、自分はどんな風に働きたいのか、どんな働きがいを求めているのか、どう生きたいのか、どんな生きがいを感じていたのか−この問いを常に自問自答することになるんですよね。


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 ★ おまけ
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 人を管理するのが苦手だから管理職にはならない−というのは、実は間違っていますよね。
 管理職は人を管理するものではありません。
 それに専門職であってもプロジェクトリーダーみたいなことはやらなければなりませんからねぇ。

 


このメールマガジンは、キャリアスケープ・コンサルティングが発行しました。
キャリアスケープ・コンサルティングのホームページは      
 
管理職は専門職よりも偉い、そんなわけはないのですが、なぜかそれが前提の人事制度が多いようです。
すべての役割は企業経営上必要だからあるのです。
キャリア開発と役割という視点から考える人事制度(HRD/HRM)については こちら 

 

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