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目標によるノルマ管理?(#9)
バランスド・スコア・カード(#10)
2004/6/2
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定期昇給(#11)

 先日(2004年のことですよ、念のため)、キャリア・コンサルタント全国大会に参加してきました。
 その冒頭、某省の局長である某という方が、「最近カタカナ言葉が多すぎる。ある数学者は、目は見えなかったが数学は概念定義がしっかりしているので目が見えなくても考えることが出来ると言っていた。カタカナ言葉は示しているものが通じずにお互いに誤解したままということもある。明治時代には苦労して日本語に直していた。そうしたことをすべきではないか」といったような発言をなさっていました。
 いまだにこんなこという人がいるんだねぇ。

 日本語なら概念定義がしっかりしているんでしょうか?
 日本語になっていないカタカナ言葉を、手垢の付いた(いろんな意味がまとわりついてしまった)日本語に置き換えることはかえって混乱を招かないのでしょうか?

 明治時代に置き換えた言葉の中には「造語」もあったと聞きます。
 今でこそ当たり前に使っている、借方、貸方、貸借対照表というのもそうだと聞いています。
 貸借対照表は中国では「残高表」と書くとか。
 こちらの方が分かりやすいような。

 どこの言葉を使おうと、概念定義をしっかりしなければならないのは一緒のこと。
 言葉の種類の問題ではないのではないかと思いますがいかが?
  (そういえば数学でもカタカナ使うけどなぁ。正弦、余弦、正接といわずにふつうサイン、コサイン、タンジェントというじゃない? これも公文書では正弦て言わせるのかな? 総和なんていわずにシグマって言わないと通じにくいような‥)

 キャリアという言葉なんかまさにそうですよね。
 人によって定義が違いそう。
 あなたの定義する「キャリア」って一体なんですか。


 それはさておき、本日のテーマは、先ほどの方にしてみれば噴飯ものの「バランスド・スコアカード」です
  (どう訳すんだろう? 「均衡させた評価表」?)


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 ★ 何それ? バランスド・スコアカード?
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 バランスド・スコアカードというのはハーバード・ビジネススクールのカプラン教授とコンサルタントのノートンという人によって提唱された業績評価の枠組みです(バランス・スコアカードといわれる方が一般的かも。でもバランスドなんですよね。「ed」に意味がある)。

 これまで、どちらかというと売上高や利益といった当面の財務指標(要はお金の話と言うことね)を部門や工場などの組織単位、あるいは個人の業績評価の指標とすることがほとんどでした。
 ただ、この場合ですと財務的に表現できないもの(たとえばお客様から信頼されている程度など)を評価することが出来ないという欠点がありました。
 また利益を特定するには期間を決めなければなりませんから、どうしてもコントロールしやすい期間、多くは1年を基準としなければならなくなり、短期的なものに関心が向きがちでした。

 そりゃそうですよね。
 財務指標というからには、どうしてもお金に置き換えないといけないわけですから。
 そうするとむりやりお金で表現しようとするわけですね。
 ただこうなると、どうしてもお金に換算できるものばかりに関心が向きますし、短期的な内容になってしまいます。

 そこでバランスド・スコアカードでは
  1.財務の視点
  2.顧客の視点
  3.内部プロセスの視点
  4.学習と成長の視点
の4つの視点から、具体的な経営目標を設定しその実現の程度を評価しようとします。
 この4つの視点をバランスさせることを提唱したのです。
 これらのバランスを取ると言うことは、具体的には
  1.社外の視点で見た事業評価と社内の視点で見た事業評価
  2.過去の実績の評価と将来性に対する評価
  3.計量的指標による評価と主観的尺度による評価
−のバランスを取ろうということでもあります。

 もう少し具体的に言うと、業績が上がるためには(財務的な計量的指標が向上するには)、顧客に受け入れられる必要があります。
 しかも当面の顧客だけでなく将来も顧客であり続けてくれる、あるいは新たな顧客が創造されるようになっている必要があります(将来性に対する評価)。
 顧客に受け入れられるサービスや製品を安定的に支給し続けるためには社内のプロセスを改善しておかなければなりません。
 またこれを可能にするのは事業に携わる社員の質の向上があって初めて可能なことです。
 社員の成長こそが内部プロセスのグレードアップをもたらすのです。
 だからこの点にも目を向けなさい。
 とまぁ、こんな筋書きになっていて、4つの視点をうまく満たしていくこと、バランスさせることが要なのだと言うことになるわけです。

 この考え方はすでに多くの会社で、具体的な評価方法として採り入れられ、部門の業績評価の結果が部門ごとの業績賞与の支給額(率)に反映されていたり、管理職などの個人の評価にも用いられるようになっています。


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 ★ キャリア開発となんの関係があるの?
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 ところで、これがキャリア開発にどう関係があるのでしょうか?
 それは「学習と成長の視点」のエンジンとなるのが「キャリア開発」いあるといえるからです。

 先にも触れたように顧客の視点から見た評価を向上させるためには、内部プロセスを改善していくことが求められます。
 このためには内部プロセスについての理解を深め、さらによくするための工夫をしたり、あるいはサービス業などではサービスがプロセスそのものですから、サービスレベルの向上を図っていくことが求められます。
 そこで組織のメンバーがいかに学習し、成長しているか、またそうした仕組みが調えられているかという視点が大切になります。
 これが学習と成長の視点というわけです。

 内部プロセスの改善・改革とそれによる顧客満足の創造を後押しするのがメンバーの学習と成長なのです。

 では、社員がもっと学習しよう、成長しようと思うのはなぜでしょうか?
 それは評価や報酬のためだけではありません。
 お客様に喜んでもらえるという達成感(つまり働きがい、働くことへのてごたえ)であったり、あるいはまた自分が自分らしくいられることへの満足感のためでもあります。
 また自分が成長できているという実感もあるでしょう。
 メンバーがこのような点に気づけるのは、人から言われるからではなく、それぞれが「自分の仕事であるという実感」を感じており、自分にとっての働くことの意味や意義を感じられるからです。
 そうした仕事観を持つのは、自分にとってのキャリア、キャリア開発について真剣に考えているからに他なりません。
 逆に言えば、キャリア開発に取り組んでいないと、学習・成長の視点での評価は長続きはしないということが言えます。

 バランスド・スコアカードの考え方を導入しようと思っているんだが−そんな話になったらしめたものです。
 「社員が自分の仕事にコミットメントを持って働いてくれるのは、それが自分のキャリア開発に意味を持つからですよ。
  是非、学習と成長の視点にはキャリア開発の発想を採り入れて下さい」−と進言したいものですね。


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 ★ やはり勉強しなくちゃ
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 バランスド・スコアカードは比較的新しい(といっても、話題になってから、もうだいぶんたっていますけど)マネジメントの考え方です。
 発信地は人事の領域ではなく、職能部門的に言うと財務・経理の領域です。
 人事の世界でも、業績評価の新しい枠組みとして取り上げられました。
 人事の人は経理が苦手な人が多いので、脂汗をかきながら勉強した人も多いのではないかと思います。
 キャリア開発に関わる方も、カウンセリングあるいは人間に対する興味を持つことも大切ですが、こうしたものをきちんと理解して、キャリア・カウンセリングやキャリア開発との関係性を把握しておくことも必要だと思います。
 でないと、コンサルテーション、組織変革へと結びつけることが難しくなってしまいますよ。


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 ★ おまけ キャリア=仕事人生
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 ところで、冒頭のキャリアの訳語の件。
 私はやはりキャリア=仕事人生という定義が一番しっくり来ます。
 この定義は「個立の時代の人材育成」の著者である横山哲夫さんが使っていらっしゃるもので、初めて聞いたのは多分14年くらい前ですね。
 過去の実績や資格の有無といった、がさがさした感じがなく、しっとりとした、将来へ向けた伸びやかさを感じられるのでとても気に入っています。

 仕事人生はワーキング・ライフとも言い換えられます。
 ワーキング・ライフはトータル・ライフの中に含まれます。
 仕事人生は全人生の一部なんですよね。
 なので、ときどきキャリアとライフを対立させて、仕事か?人生か?
みたいな構図で考えることを勧めているのを見ると違和感がありますね。
 仕事人生のない全人生というのは、ないとは言えないけど考えづらいし、全人生のない仕事人生は考えられないですけど。
 まぁ、とらえ方はいろいろあってもよいのかもしれませんね。
 そのうち落ち着いてくるでしょう。

 


 このメールマガジンは、キャリアスケープ・コンサルティングが発行しました。
 キャリアスケープ・コンサルティングのホームページは     
 
 文中でも述べていますが、バランスド・スコア・カードを導入するにしても、まずは自分はどんな役割を担うのかが分かっていないと‥‥。
 役割、キャリア開発という視点から考える人事制度(HRD/HRM)については こちら 

 

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