2)ラダーモデルとは何か

あたかもはしごや階段を上るようにキャリア展開を考えるモデルです。
最も分かりやすいのは会社の中にある管理職としての階段ではないでしょうか? 
人事制度として「職能等級制度」が導入されている場合、この職能等級というのもラダーの一つです。
組織の外でも資格試験などに〇〇2級、〇〇1級というようなものがありますが、これも、一つ一つステップアップしていくものという意味ではラダーモデルと言ってよいでしょう。

ラダーモデルのよいところ

階段やはしごを上るイメージとしてのラダーモデルはある種の成長モデルといえます。
まず、階段にしてもはしごにしても、それを上ることそのものが目的なのではなく、上った先のステージに何らかの魅力があるということが前提になっています(時に、上ることそのものが目的となってしまっている場合があることには、設計者も運用者も、そして利用者も留意しておく必要があります)。それが魅力的であればあるほど、上ることへの情熱が湧いてくることになります。成長イメージを描ける、将来への展望が開けるという意味でもああります。キャリア開発という視点で見れば、キャリアゴールが描きやすいということでもあります 。

また、今いるステージと次のステージの間にはどのような差があるのか、そのステージに至るためには、どのような知識やスキル、経験が必要なのかが分かりやすいのも特長といえるでしょう。取り組むべきテーマがはっきりしますし、それをクリアすることが、自身のこれからにどう寄与するかが分かりやすいので、難しい内容であっても継続的に取り組もうと思えます 。

取り組んだ結果、自分が今どの段階まできているのかが分かる、次のステージに少しずつでも近づいているという実感を持てる-というのもラダーモデルのよいところといえるでしょう。成長を実感できるというのは、自身で自分を動機づける上で大きな要素となりますし、自信にもつながります。

こうしたメリットがあるので、いろいろなところでラダーモデルは用いられます。
企業でいえば、社内での自身のポジショニングが分かりますし、これからどうすればよいのか、何を目指せばよいのか、つまり組織が求めているキャリアゴールも捉えやすく、キャリアプランを立てやすくなります。

ラダーモデルのネガティブな側面

一方でうまく行かない場面もあります。
まず、はしごを上らないということは「停滞」を意味することになりがちという点があります。上がっていくことが基本的な前提なので、上がらないでいるということはそれに乗っていない、つまりあぶれているというように目されてしまうことになるからです。次のステージに定員がある場合には話がややこしくなってしまいます。はしごを上れないのは本人都合ではなく定員があるからであっても、停滞しているとみられてしまうことになるからです。
また、次のステージが本人にとって魅力のないものである時にも、はしごを上らないということが起きてきます。上るところもなく、降りることもできないという、行き詰まりになってしまうことになります。
組織内のラダーは「管理職としての職位」であることが多く、こうした現象が実際に発生してしまいます。管理職は組織戦略に基づいて設定しますから、人が成長したからといって管理職のポストを増やすわけにはいきません。どうしても「現象として停滞している人」は出てきてしまうのです。
それでも次のステージを目指そうとするなら定員に入るしかないので他者よりも秀でようとすることになります。この「他者よりも秀でたい」というところがよい面の競争意識に結びついた結果、日本のモーレツサラリーマンを生み、高度成長を支えました。しかし、ネガティブな面での競争意識に結びつくと「いかに相手をだしぬくか」という発想を生むことになります。結果的に組織内での共同関係を阻害したり、コンプライアンス違反すれすれの行動(場合によっては脱線している)を招くことになってしまいます。かつての「成果主義人事制度」(本当の意味での「成果」ではなかったのですが)がうまく行かなかったのはこうした理由によるところも大きいと考えられます。

また、「管理職」に魅力を感じない人にとっては不幸な状況かもしれません。次のステージが社内には見当たらないので、これからのキャリアを描きづらくなります。また自身にとっては魅力がなくても、ラダーモデルで動く組織内では否応なしにはしごを上ることに巻き込まれてしまうことになってしまいます。