「役割」の概念を導入することによる個人のメリットは3つあります。

キャリアゴールとキャリアパスが見えやすい

 一つは自分のなりのキャリア・ゴールとキャリア・パス(つまりキャリアスケープ)を、具体的に考えられることにあります。自分の将来像を描けるわけですから、具体的な努力の仕方も分かりますし、しようという気にもなります。

 これまではどちらかというと、キャリア・パスやキャリア・ゴールを考える手がかりは「職位」しかありませんでした。○○長あるいは△△リーダーしか、キャリアパスを考えるときの「言葉」がなかったのです。
 これでは、スペシャリストとしてやっていきたいという人や、お客さんと接していることあるいは現場にいることが一番楽しいと思っている人には、キャリアが描けないのです。つまり将来が見えなかったわけです。
 役割が見えるようになることで、稀少性を持つ専門的な役割など多様化したゴールの中から自分に合わせて選ぶことが出来るようになります。単線から複線へのパラダイムシフトです。

 また、仮にに想定したキャリア・パスから外れるようなジョブ・ローテーションにぶつかったとしても、中長期的なビジョン、つまり、今はこうなっているけれどそれは当面のことだから、と納得の上でその異動に応じることが可能です。
 こうした中長期のキャリア・パスが見えないままでのローテーションであれば、その時点で将来に失望して社外への転出を考えることにつながります。

成長課題がはっきりする

 二つ目は自分の成長課題を自分で確認できることです。
 キャリア・パス上にある役割は具体的な職務の集まりですから、求められる資格やスキルを見たり、実際にその役割についている先輩の姿を見たり、聞いたりすることで、今の自分に足りないことは何かを具体的に知ることが出来ます。
 何が足りないかが分かれば、社外研修や社内研修に参加しなければならないかどうかは、自己責任で決定できます。
 研修に参加するにしても、自分なりに課題がはっきりしていますし、それができるようになることが自分の中長期のキャリアにとってどのように有用かも分かりますから、「やらされる」のではなく、自ら学び、成長しようとすることが期待できます。

処遇の根拠が明確になる

 第三のメリットは処遇の根拠が明確になることです。
 年功的処遇制度下では、処遇は徐々に増加していきます。安心といえば安心ですが、ある意味ではこれを待たなくてはなりません。それに自分の関わりの程度が反映されにくい面があります。

 役割が明確になり、これに応じた処遇が行われるようになると、早くそうした役割を担えるようになれば、相応の処遇が植えられることになります。 
 残念ながら、実際にそうした役割につけなければ、低い水準であることにも納得することは出来ます。
 年功的な処遇制度が、仕事が同じでも「年功」によって処遇が異なるということに比べれば、その納得感は高くなります。

 特に近年の傾向として、定年退職までつとめられるかどうかは非常に難しくなってきています。
 またそれを見込んで組織に入ってくる人材も少なくなってきます。
 いつまでもいられるわけではない(いつまでも組織があるかどうかも分からない)以上、早いうちに良い処遇が得られるようになっている方が個人にとってはメリットとなります。


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